「種(しゅ)」と「品種」について(その2)
2020年11月より「ティピカ」と「ブルボン」というコーヒーの香味の礎となる2つの品種にフォーカスし、ご紹介して参りました。
ホンデュラスの優れた生産者による「ティピカ」と「ブルボン」、品種の違いによって異なる香味が感じられることを多くの方に知って頂けて感謝の気持ちで一杯です。
現在はコスタリカ「サンタテレサ」マイクロミルの「ティピカ」品種と、グァテマラ「サンタ カタリーナ」の高標高区画で生産された「ブルボン」品種をお愉しみいただけます。
是非、産地、生産者の異なる両品種をお愉しみください!
どちらも非常に優れたコーヒーです。
さて、今回は「ゲシャ品種」について。
近年、認知度が高まっている「ゲシャ」品種のコーヒー、一般的には「ゲイシャ」「Geisha」と表記されることが多いですが、発見された村の名前が由来であるならば「ゲシャ」「Gesha」となるのが筋ではないか?と考えてカザーナコーヒーでは2019年より敢えて表記を「ゲシャ」「Gesha」としています。
( 以前の引用記事 "Stop calling it "Geisha” already" )
「ゲシャ品種」の歴史を簡単に振り返ると、このコーヒーは1931年にエチオピア南西部の「ゲシャ村」で発見されたところから始まり、ケニア、タンザニアを通って1953年にコスタリカにある「熱帯農業研究高等教育センター (CATIE)」に「サビ病への耐性」がある品種として持ち込まれました。
「CATIE」からパナマの農園にゲシャ品種が渡っていったのは1960年代半ばですが、生育が遅く、一本の木から成る実の数は他のアラビカ種に比べて半分以下、しかも標高の低い土地で育てられていた為に風味も突出したものがなく、ゲシャ品種の評価は高いものではなく「品種改良の素材」程度にしか認識されていなかったそうです。
その評価に大きな変化もたらす事件が起きたのが、2004年のパナマのコーヒー品評会「ベスト オブ パナマ」です。
「エスメラルダ農園」が出品したゲシャ品種のコーヒーが、通常の10倍という空前の高額で落札されたのです。それまで全く注目されなかった品種が、中南米のコーヒーにはなかった圧倒的な華やかな香味を放ち、センセーションを巻き起こしました。
この劇的な評価の変化の要因はそれまでになかった「高標高」でゲシャ品種を生育した点にあったようです。それまでは高標高の環境でゲシャ品種を栽培することがなく、突出した香味が現れませんでしたが、高標高で栽培することにより複雑で豊かな果実味が生まれたのです。
このニュースは世界中のコーヒー愛好家の間に広がり、希少性からさらなる高額化が進み現在に至ります。またパナマゲシャの成功を受けて、近隣諸国でもゲシャ品種の生産を試みる生産者が急増しています。
2020年の「ベスト オブ パナマ」のゲシャ/ウォッシュト部門では見事第1位を受賞した「フィンカ ソフィア」の落札価格が歴代最高額となり再び世界を驚かせました。
現在、コスタリカ、パナマ産の素晴らしいゲシャ品種のコーヒーを販売中です。
同じゲシャ品種でも、生産地、生産者、精製が異なるとそれぞれ違った風味が感じられます。
至高のコーヒーを是非、お愉しみください!
追憶ですが、カザーナコーヒーで初めて取り扱ったゲシャ品種はパナマの「カジェホン」ナチュラルでした(2015年、Cerro Puntaの誤植と併せて「ゲイシャ種」表記が見受けられます)。
自然災害により壊滅的なダメージを受け、幻となってしまった「カジェホン農園」、甘みある複雑で豊かなフルーティな風味が未だ記憶に残っています。
店内、無言で静かに、余韻の香りまで愉しまれていた当時のお客様方の姿も未だに脳裏に焼きついています。
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